
2025年9月4日~5日(木・金)、拡大理事会研修で鹿児島県を訪問しました。
全岐阜県生協連では、役員の啓発活動として、毎年理事会で視察研修を行っています。「防災・減災」や「平和活動」を重点課題としており、近年では、2022年度に広島県、2023年に兵庫県、2024年度に岡山県を訪問し、当地の生協連にサポートしていただき学習してきました。今年度は被爆・戦後80年の節目の年として、また全岐阜県生協連設立50周年事業として鹿児島県を訪問し平和学習を行いました。

展示品や遺品から、戦死した人たちの無念と悲しみが今なお滲み出ているようでした。
初日は、中部国際空港発で9:30に鹿児島空港着、マイクロバスで南九州市知覧町に向かいました。平和公園内で昼食を済ませたところで、鹿児島県生協連の上城会長と東垂水専務にお越しいただいてご挨拶、さっそく知覧特攻平和会館を視察しました。
知覧特攻平和会館は、太平洋戦争末期に特攻基地として使われた知覧飛行場の跡地に建てられた施設で1987年に開館した施設です。ここから出撃し戦死した陸軍航空隊1036名の遺影・遺書・遺品が展示されていました。

主な展示品として、一式戦闘機「隼」の実機(戦後アメリカに渡り、後に日本へ戻された機体)や、零式艦上戦闘機(零戦)の残骸(海中から引き上げられた実物)があり、遺影展示室には、出撃順に並べられた1036名の若者たちの写真や遺書が、遺品展示室には家族や恋人への手紙、軍服などが展示されていました。
当初は飛行学校であったものが、戦況の悪化によって戦争末期には陸軍特攻基地に変わり、20歳前後の若い隊員たちが集められては、家族や国の将来を思いながら出撃して散っていった当時の様子が生々しく表されていました。

自分の目で見たり聴いたりすること。そして語り継いでいくことの大切さを実感しました。

視聴覚室では語り部の方の講話をお聴きしました。第15期生で振武隊長として出撃した高島俊之少尉が、自身もまだ20歳の若年であったにもかかわらず、特攻隊員たちの精神的支柱として、特に出撃前夜に隊員たちと語り合い、彼らの不安を和らげるよう努めたという逸話や、自分は遺書を書く余裕もない中での出撃であったため、後にお母さんが息子の気持ちを思い綴ったと言われる遺書の朗読に胸が絞めつけられる思いがしました。
また、穴澤利夫大尉が、大学時代の婚約者から贈られた白いマフラーを首に巻いて出撃したお話では、「替われるものならあのマフラーのように、いつも離れられない存在になりたい」という婚約者の願いや、若くして恋人と別れなけれはならなかった穴澤さんの無念の思いが偲ばれました。語り部の方々は、知覧から出撃した方の物語を通じて「戦争の悲惨さ」「命の尊さ」「平和の大切さ」を伝えられており、「継承」の担い手として貴重な仕事をされていると感じました。

平和会館視察に続き、東垂水専務が公園内や周辺の戦争遺跡を案内してくださいました。遺族や有志から寄進された「灯ろう」、「三角兵舎」「給水塔」「防火水槽」「掩体壕」など、今でも残る当時の史跡を見て回りました。やはり、自分で歩いて、見て、聞いて学ぶことが大切であり、命の重みを実感するとともに、戦争や平和について考える何よりの機会となるのだと感じました。
激戦地間近の地で、戦争という現実に向き合って活動してきた方々の気迫と実践を学びました。

二日目は、鹿児島市内にある「生活協同組合コープかごしま」の本部に伺い、生協の平和活動について学習させていただきました。コープかごしまは、1971年の設立で、組合員数は34万人を、事業高も363億円を超える規模の生協です。岐阜県と比べて事業所数も多く組合員加入率は4割と、県内にひろく生協の輪をひろげられています。

組織活動にも力を入れられており、今回は、組織運営本部組合員活動課の福丸裕子さんから平和活動についてレクチャーしていただきました。
まずは、「2015ピースプラン戦後70年」のDVDを視聴し、コープかごしまの平和活動のあゆみを学習しました。コープかごしまには数多くの活動グループがあり、その中で平和の分野では、「戦跡ガイドグループ」「南薩西平和グループ」「憲法グループ」が現時点であるそうです。今回の研修にあたり、事前資料として「アジア・太平洋戦争と鹿児島戦跡調査 -南薩地方編-」冊子と「戦跡から学ぶ平和の大切さ」DVDを送っていただいていたのですが、これらもそのグループでの制作物の一部でした。

終戦間近の鹿児島県には、沖縄戦との密接な関わりによる戦跡の多さなど、他県には見られない特徴がいくつもあるとのこと。平和グループでは、長年に渡り続けてきた調査活動の成果を更に活かせるよう、「戦争体験朗読劇シナリオ」の冊子化や、コープかごしまの平和の取り組みのDVD化も進められているそうです。
さらには、制作だけでなく、その活用についても考えられており、県内の中学校等や図書館に送付したり直接訪問して交流したり、各地域の組合員活動では教材として利用されています。

2023年からは、出水戦跡DVDの制作を開始され、完成後には組合員や職員の学習教材として活用してきたそうです。そして、昨年9月に「戦後80年実行委員会」を立ち上げ、平和グループ以外にもメンバーをひろく集めながら毎月の定例会で、企画検討されています。実行委員会は現在48名が参加して、グループに分かれて様々な企画を検討・実施しているそうです。

(コープかごしまホームページより)
今年は、戦後80年の企画として第1弾~第7弾までの活動が順次進んでおり、5/3「戦後80年 ピースかごしま2025」での創作劇「朝は明けたり」や安田菜津紀さん講演会のこと、「6.17平和のつどい 戦後80年ピースかごしま2025」(西上床キヨ子さん、桂竹丸さん講演会)など直近の実践事例も紹介していただきました。映画や音楽などの企画もあり、より多くの人が身近なことを通して平和を考えられるようアイデァを出し合っていることがわかりました。生協職員の意識向上も大切にされており、全職員による「ピースフラッグ」の取り組みも徹底されていると感じました。

2日間の短い日程でしたが、鹿児島県の戦跡や生協の活動に間近に触れ、あらためて戦争の悲惨さ、命の重み、平和の大切さを実感するとともに、これからの平和活動への貴重な投げかけをいただくことができました。起きたことを正しく知ることはもちろんですし、その上で「戦争を起こさないためには何が必要なのか」を考えることも等しく必要なことだとの示唆もいただきました。
平和関連の他にも、合間を縫って知覧武家屋敷や仙厳園の見学も組み込むことができましたし、行程の検討や準備段階から当日まで、親身になって支援いただいた鹿児島県生協連、コープかごしまの皆様に心から感謝申し上げます。鹿児島県と岐阜県の距離が縮まったように思います。本当にありがとうございました。

■今回の参加者 ※敬称略
全岐阜県生協連 会長理事 根崎 周一
全岐阜県生協連 副会長理事 内藤 浩
岐阜県学校生協 専務理事 片桐 学
岐阜県学校生協 総務課長 岩井 浩一
岐阜労済生協 専務理事 平井 恵子
岐阜大学生協 専務理事 前口 直樹
コープぎふ 専務理事 児玉 幸夫
岐女短生協 理事長 小野廣紀
西濃医療生協 理事長 木村 隆之
西濃医療生協 専務理事 中村 英洋
生協アイチョイス岐阜 理事長 子安 貞継
生協アイチョイス岐阜 専務理事 浅野 正嗣
全岐阜県生協連 専務理事 佐藤 圭三
東海労働金庫営業統括部 副部長 鎌田 尊義

