活動の報告

『協同』のルーツを学び直しました。「2023年度拡大県連理事会研修in神戸」【23.10.10】

甲南学園学園史資料展示室の様子。平生釟三郎氏や甲南学園の歴史等を説明していただきました。

2023年9月21日((木))~22日(金)、拡大理事会研修で兵庫県を訪問しました。
全岐阜県生協連では、役員の啓発活動として、毎年理事会で視察研修を行っています。近年では、2017年度に熊本県、2018年度に静岡県、2019年度は北海道、2022年度は広島県を訪問し、防災・災害支援を共通テーマに学習してきました。今回は兵庫県生協連を通じて視察先の紹介やご連絡もお願いして実現しました。神戸市内の5施設を15名で訪問し学習しました。

●主な研修プログラム

(1)平生釟三郎の足跡を訪ね、その信念や業績について学ぶ。…甲南学園、甲南大学生協、平生記念館
(2)賀川豊彦の生涯・運動から、協同組合の本質について学ぶ。…賀川記念館
(3)阪神淡路大震災から、「防災・減災」「災害支援」「人と人との絆の大切さ」等を学ぶ。…人と防災未来センター

甲南大学生協施設を見学して。理事会室の中谷さんに撮影していただきました。

●今なお脈々と引き継がれる「共働互助」の精神を実感しました。【甲南学園、甲南大学生協、平生記念館】

私たちの岐阜県(岐阜市加納)生まれで、実業家として経済界で活躍する一方で、甲南学園という理想の学校をつくりあげ、さらには政治家としても奉仕家としても多くの偉業を残した平生釟三郎氏の足跡や信念を学ぶため、神戸市東灘区岡本の甲南学園にお邪魔しました。同学園は平生氏が1919年に創立した旧制甲南中学校を起源とする学校で、100周年を超え、現在は甲南大学、甲南高等学校、甲南中学校を擁しています。

甲南学園災害記念碑

この岡本キャンパスには立派な「甲南学園学園史資料展示室」があり、平生釟三郎氏の略年譜、甲南学園のはじまり、建学の精神、学園の歴史を表わす貴重な資料類が展示されていました。同学園総務課の天野課長に説明していただき全体像を学習した後に、学園史資料室担当の溝上さんに学園内の要所を案内していただきました。阪神大水害(1938年)や阪神・淡路大震災(1995年)を悼む「甲南学園災害記念碑」や「阪神・淡路大震災犠牲者慰霊碑」からは、平生氏が残した「常ニ備ヘヨ」の教えが伝わり、防災に限らず常日頃からあらゆる事に全力を尽くす生き方が大事だとの思いを強くしました。

構内を案内していただきました。中央が平生釟三郎氏の銅像。

また、平生氏の資料を保存している4号館の資料室も特別に見学させていただきました。大正2年から32年間書き記した「平生釟三郎日記」(全18巻)の原本や関連資料等も見せていただき、翻刻作業の経過なども教えていただくことができました。常に信念を貫き全力を尽くす同氏の生き方をここでも感じることができました。

4号館の資料室にて。資料の量や翻刻作業のご苦労に圧倒されました。

続いて、甲南大学生協にお邪魔し、内田専務理事から同生協の沿革や運営等のお話をお聴きした後、理事会室の皆さまに生協施設の「KONAN INFINITY COMMONS」を案内していただきました。甲南学園100周年(2019年)を記念して建て替えられたばかりの施設はどこもピカピカで広々としており、学生さんたちが集まりやすいこと、気持ちよく利用できることを最優先にした運営がされていることがよくわかりました。

甲南大学生協の様子。生協の概要をお聞きし案内していただきました。

大学とも日常的に綿密な連携がとられており、平生釟三郎氏の志が甲南大学生協にも受け継がれていることを感じました。生協食堂で昼食をいただき、お洒落なレストランのムードで学生に戻った気分で楽しくランチができました。

食堂を始めとして、いずれも明るく開放的な施設でした。

さらに、バスで約10分移動して神戸市東灘区住吉本町にある「平生記念館」を訪問。ここは平生氏の生前の住居跡に建築した施設で、甲南学園の同窓会館として利用されています。936坪の敷地内には記念館に隣接して「セミナーハウス」もあり、甲南学園の教職員や学生、同窓会員はもとより地域の方も会合やカルチャースペースとして利用できるようになっています。長い年月を経た今でも、平生氏の志を受け継ぐ人たちが集まり交換できるところであることはもちろん、この平生記念館は、「自由で開かれた場」として甲南学園と地域とをつなぐ貴重な役割を果たしているのだと感じました。

平生記念館の様子。ふだんは見学対応等はされていないそうですが、丁寧にご案内いただきました。

●賀川豊彦の教え「平和こそ最大の福祉である」が今こそ価値を発揮します。【賀川記念館】

続いては、神戸市中央区吾妻通にある「賀川記念館」を訪れました。同館は、社会福祉法人イエス団が運営する施設で、私財を投げ打ち、社会運動家として救貧活動や労働運動、協同組合運動に生涯を懸けた同氏に関する資料が展示されています。参事の田中重至さんから約1時間のお話を聴きました。賀川豊彦氏の世界的な評価では、ガンジーやシュバイツァーと並び20世紀の三大聖人と称えられていること、14歳で洗礼を受けてから、肺結核を患いながらも神戸のスラム街に移住し住民と同じ暮らしをしながら救貧活動に取り組んだこと、やがては「救貧」ではなく「防貧」が必要であるとして、労働者運動を起こし、全ての人間の幸せを実現するための協同組合運動を進めるに至った経過などを説明していただきました。争いや競争ではなく、理解や支え合いが世の中の問題を解決する唯一の道筋であることを学ぶことができました。

賀川記念館の様子。元コープこうべの職員である田中さんからお話をお聴きして学習しました。

●「常ニ備ヘヨ」と「共働互助」は全てのことに当てはまると実感。【人と防災未来センター】

2日目は、神戸市中央区脇浜海岸通にある「人と防災未来センター」で防災・減災について学習しました。同センターは、阪神・淡路大震災の経験と教訓を語り継ぎ、「防災・減災・縮災」の大切さを学習する施設として兵庫県が設立したもので、非常に人気の高い施設です。今回は西館・東館の120分コースとしました。西館最初の「震災体験フロア」では、阪神・淡路大震災の発生時の状況を大型映像と音響で体感し、続く「震災の記憶フロア」「防災・減災体験フロア」では、震災関連資料の展示品により被災地の復興の足跡を学びました。東館の「BOSAIサイエンスフィールド」では防災・減災に関する最新の情報(映像空間・VR映像)を体験することができましたし、「こころのシアター」の映画上映では災害列島に暮らす私たちが災害から生き延びるための問題提起を受けました。
ここでも、平生釟三郎氏の教えである、常日頃から備えに尽力すること、人と人が助けあうこと、支えあうことの大切さを実感できました。

人と防災未来センターの外壁には、南海トラフ地震の最大津波想定高(34.4m)が表示されていました。(中)

あっという間の2日間でしたが、まさに「協同」の大切さや可能性を感じることができた今年の拡大県連理事会研修になりました。今回の研修にあたりご支援いただいた兵庫県生協連の皆様、温かくご対応いただいた甲南学園、甲南大学生協、平生記念館の皆様、賀川記念館の皆様に感謝と御礼申し上げます。

大震災からの復興は「協同」の力で成し遂げられてきたのだと学びました。ありがとうございました。

■今回の参加者  ※敬称略

全岐阜県生協連  会長理事    大坪 光樹
全岐阜県生協連  副会長理事   内藤 浩
岐阜県学校生協  理事長     村上 達也
岐阜県学校生協  専務理事    片桐 学
岐阜大学生協   専務理事    坂田 充宏
岐阜労済生協   専務理事    平井 恵子
コープぎふ    専務理事    根崎 周一
岐女短生協    理事長     小野 廣紀
岐女短生協    代表理事    前口 直樹
西濃医療生協   理事長     木村 隆之
西濃医療生協   常務理事    松岡 和彦
生協アイチョイス岐阜 理事長   子安 貞継
生協アイチョイス岐阜 専務理事  浅野 正嗣
全岐阜県生協連  専務理事    佐藤 圭三
東海労働金庫営業統括本部 副部長 中村 隆之